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成果があがらない人に持ってほしいトヨタ式「なぜ?」の思考

トヨタ式5W1H思考・カイゼンの極意

■原因は本社自身にあった

 つまり、残業の原因は➀膨大な書類の作成②パソコンの台数不足―であり、「残業を減らせ」と指示する本社自身が残業の原因を生み出していたのです。報告を聞いたA社トップは驚きました。急いで報告書の数を調べるとたしかに数が多く、それも「何時までに」というものもいくつもありました。

 これでは残業が減るはずもありません。無理に減らそうとすれば、子どもを見る時間を削るか、自宅に仕事を持ち帰るほかはありません。A社トップはこれまで「残業の真因」も調べずに、一方的に「残業を減らしなさい」「もっと効率よく仕事をしなさい」と指示してきたことを反省、報告書の数を必要最小限にまで減らし、保育士さんの人数に応じてパソコンの台数も増やすといった改善を行いました。

 結果、保育士さんたちの残業時間は減り、子どもたちのための時間も増えることになりました。GEの伝説のCEОジャック・ウェルチがかつて誰かが「私は週90時間も働かされています」と言ってきたらどうしますか、と質問され、こう応じたことがあります。

「それは君、何かとんでもない間違いをしているんだ。どんな仕事をしたら90時間になってしまったのか、20項目にまとめてみなさい。そのうち半分は意味のない仕事だろう。そしてもしそのすべてが意味のある仕事だとしたら、半分は他の人に任せなさい」

 ウェルチがここまで人道的だったかどうかはともかく、「過度の残業」には必ず「原因」があるはずです。そして「原因」の先には必ず「真因」があるのです。大切なのは「なぜこんなに残業をしなければならないのか?」という「真因」を知ることであり、それなしに「早く帰れ」「残業を減らせ」と言っても何の意味もないのです。

 長時間残業が当たり前になっているあなた、「仕方がないな」とあきらめるのではなく、その「真因」を知るために、「なぜ」と問いかけてみませんか?残業の真因がはっきりすれば、「何を変えればいいのか」も見えてきます。真因のすべてをすぐに改善できるわけではありませんが、なかには自分の力で変えられるものや、「もっとこうしたら」と提案できるものもあるはずです。

 大切なのは「できない不満ばかりを言うのではなく、できることからどんどんやっていく」というのもトヨタ式の考え方なのです。

 

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桑原 晃弥

くわばら てるや

1956年広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者、不動産会社、採用コンサルタント会社を経て独立。人材採用で実績を積んだ後、トヨタ生産方式の実践と普及で有名なカルマン株式会社の顧問として、『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』(成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(PHP新書)などの制作を主導した。著書に『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP文庫)、『ウォーレン・バフェット成功の名語録』(PHPビジネス新書)、『伝説の7大投資家』(角川新書)、『トヨタのPDCA+F』(大和出版)など。バフェット関連書籍多数。


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